骨粗鬆症の薬物治療〈各論⑧〉 (16)
骨粗鬆症とは骨強度が低下し、骨折の危険性が増大した状態です。当院では骨折が原因で健康寿命や生命予後を短縮する患者さんを1人でも多く減らすべく、骨粗鬆症診療に力を入れています。今回のコラムでは薬物治療の中で最新の薬剤であるロモソズマブについて簡単に紹介したいと思います。
ロモソズマブとは
ロモソズマブ(商品名:イベニティ)は骨形成を阻害するスクレロスチンに対する抗体製剤(抗スクレロスチン抗体)です。本来、骨細胞から分泌されるスクレロスチンは骨芽細胞による骨形成作用を抑制します。そのスクレロスチンの働きを阻害して骨形成を促進させるのがロモソズマブの薬理効果です。
ロモソズマブは月に1回の皮下注射製剤で、投与回数の上限は12回です。前回のコラムで紹介したテリパラチド製剤も骨形成促進剤ですが、同時に骨吸収も促進します。一方で、ロモソズマブは骨吸収を促進させず、骨形成のみを促進するという今までにない薬剤です。要は骨をあまり潰さずにどんどん作るという薬理効果が期待できます。
ロモソズマブの治療効果
ロモソズマブは骨折抑制効果が高く、全身の骨密度上昇に効果的な薬剤です。現在使用できる薬剤の中で1年間の骨密度上昇効果が最も高い薬剤として報告されています。
ロモソズマブの副作用
ロモソズマブは非常に安全な薬剤ですが、有害事象としてよく認めるのは注射部位反応です。当院では両上腕に1か所ずつ皮下注射しますが、投与後2~3日間は発赤、腫脹、疼痛を伴う患者さんがいます。大部分の患者さんは継続可能ですが、どうしても中断を希望される方は他の薬剤に変更するなどしております。
ロモソズマブを選択する理由
1回も骨折を経験しない幸せな人生を1人でも多くの人に送ってもらいたいと願って診療しております。そのために骨折の危険性が高い患者さんには、骨折抑制効果が高いテリパラチド製剤を使用しておりました。ただ、毎日の自己注射や毎週注射に通院できない患者さんもいます。そのような患者さんには他の骨吸収抑制剤の使用を余儀なくされていました。ロモソズマブが発売されてからは、テリパラチド製剤が使えない患者さんにも治療の選択肢が増えました。これからも「一度も骨折の無い人生を:no fracture over a lifetime」をスローガンに骨粗鬆症診療を行っていきたいと思います。
徳島健生病院 整形外科科長 峯田 和明 医師
連載記事一覧
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