骨粗鬆症の薬物治療〈各論③〉 (11)

骨粗鬆症とは骨強度が低下し、骨折の危険性が増大した状態です。当院では骨折が原因で健康寿命や生命予後を短縮する患者さんを一人でも多く減らすべく、骨粗鬆症診療に力を入れています。今回のコラムでは薬物治療のうち活性化ビタミンD製剤について簡単に紹介したいと思います。

活性化ビタミンD製剤

カルシウムは骨の構成成分で骨にとって必要不可欠な栄養素です。カルシウム摂取量が不足すると骨の代謝のバランス(図1)が崩れます。

図1

前回のコラムではカルシウム製剤について紹介しましたが、カルシウムを効率よく小腸から体内に取り込むには活性化されたビタミンDの力が必要です。天然型ビタミンDは食事(魚、乳製品、きのこ類など)やサプリメントから摂取できるものであり、また日光浴により皮膚で生成できるものですが、その天然型ビタミンDは体内で腎臓と肝臓で活性化されて初めてその力を発揮します。活性化されたビタミンDは小腸からのカルシウムの吸収を効率的にし、骨の代謝のバランスを整える効果があります。

活性化ビタミンD製剤は体内で腎臓により活性化されなくても体内でその効果を発揮してくれる製剤の総称です。活性化ビタミンD製剤は、天然型ビタミンDと比較して骨密度増加効果(腰椎)と骨折抑制効果に優れています。しかしながら、骨粗鬆症治療に単独で使用することは少なく、他剤と併用することが多いというのが私見です。

私の場合は骨粗鬆症になる前の骨減少症の方で、腎機能や肝機能が正常でビタミンDを活性化させる力がある方は食事療法の補助として天然型ビタミンDのサプリメントを使用しています。

活性化ビタミンD製剤はカルシウムの吸収を良くして骨の代謝のバランスを整え、骨密度を上昇させ骨折の予防効果を発揮する以外にも、転倒予防効果が報告されています。転倒予防効果は活性化ビタミンD製剤の方が天然型ビタミンDよりも高いと報告されています。よって、転倒リスクのある骨減少症の患者さんの骨粗鬆症予防には天然型ビタミンDのサプリメントよりは活性化ビタミンD製剤を使用した方がよい場合もあります。

副作用としては、カルシウムの吸収が良くなるため、血中にカルシウムが増えすぎてしまう高カルシウム血症に注意が必要です。よって、活性化ビタミンD製剤を投与中の患者さんには定期的に採血を行って血清カルシウム値をチェックしています。

徳島健生病院 整形外科科長 峯田 和明 医師