骨粗鬆症の薬物治療〈各論④〉 (12)

骨粗鬆症とは骨強度が低下し、骨折の危険性が増大した状態です。当院では骨折が原因で健康寿命や生命予後を短縮する患者さんを一人でも多く減らすべく、骨粗鬆症診療に力を入れています。今回のコラムでは薬物治療のうち選択的エストロゲン受容体モジュレーター(selective estrogen receptor modulator: SERM)について簡単に紹介したいと思います。

選択的エストロゲン受容体モジュレーター
(selective estrogen receptor modulator: SERM)

エストロゲンとは女性ホルモンのことです。閉経後骨粗鬆症は閉経による女性ホルモン(エストロゲン)の低下が原因です。では女性ホルモンを投与すれば良いのではと考えがちですが、日本では閉経後骨粗鬆症に対し女性ホルモンの投与は保険適応外です。また女性ホルモンは骨だけでなく、乳房や子宮にも影響を与えてしまうため副作用も多くなります。そこで今回紹介するSERMというお薬は、女性ホルモン様の働きを骨にだけ選択的にしてくれます。

女性ホルモンが減少すると骨吸収が促進するようになります。骨代謝のバランス(図1)が骨吸収の方に傾いてしまうため骨が弱くなります。SERMは女性ホルモン様の働きを骨にだけ選択的に行うことにより骨吸収が過度に進まないようにしてくれるお薬です。当院で使用しているSERMは一般名をラロキシフェン、商品名をエビスタといいます。

図1

SERMの治療効果

SERMの治療効果は「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」で椎体骨折抑制効果があると報告されています。つまり女性の脊椎圧迫骨折の予防に有効です。脊椎圧迫骨折を起こすと大腿骨近位部骨折を起こしやすくなることからも、まずは脊椎圧迫骨折の予防が大切です。よって閉経後骨粗鬆症の女性患者さんには早期から使われる薬剤の1つです。

副作用

注意すべき副作用としては深部静脈血栓症があります。深部静脈血栓症はそもそも長期不動状態に陥ると起こりやすいため、注意しています。特に長期安静を必要とする手術後や寝たきりの方には使用していません。医師が注意して処方すれば安全な薬剤ですので安心してください。

徳島健生病院 整形外科科長 峯田 和明 医師