骨粗鬆症の治療① ~バランスの良い食事は骨折予防の基本~ (6)

日本は世界有数の長寿大国となり、人生100年時代を迎える日も近く、2025年には高齢者が人口の1/3を占めるようになります。一方で、平均寿命と健康寿命には約10年の開きがあると言われています。老後の生活を豊かにするためには健康寿命を延ばすことが大切です。

健康寿命を縮める原因として多いのは、脊椎圧迫骨折、大腿骨近位部骨折などの骨脆弱性骨折(骨粗鬆症を原因とする骨折)が挙げられます。また、骨脆弱性骨折は生命予後の短縮にもつながります。たかが骨折と思われがちですが、骨折が原因で死亡してしまうこともあり得るのです。

骨粗鬆症とは骨強度が低下し、骨折の危険性が増大した状態です。本邦の骨粗鬆症患者数は1300万人(男性300万人、女性1000万人)と推定されています。しかし、治療をうけている患者さんは、男性で4%、女性で20%程度です。骨粗鬆症健診の受診率に至っては5%と非常に低いです。

このままでは骨粗鬆症が原因で骨折をしてしまう患者さんが今後も増え続けてしまいます。当院では骨折が原因で健康寿命や生命予後を短縮する患者さんを一人でも多く減らすべく、骨粗鬆症診療に力を入れています。

今回のコラムでは骨粗鬆症の予防と治療に不可欠な食事をテーマにします。

重要なのはビタミンDの摂取

体内のカルシウムの99%は骨に存在するためカルシウムの摂取が骨の健康には不可欠です。しかし、最近ではカルシウム摂取のみでは不十分であるとされています。注目されているのはビタミンDです。ビタミンDは魚や干しシイタケなどから摂取される脂溶性ビタミンで、日光(紫外線)に当たることで皮膚からも合成されます。ビタミンDは腸管からカルシウムの吸収を良くしてくれる以外にも骨の代謝のバランスにも重要な役割を果たしています。

また、ビタミンDの充足が転倒リスク予防につながるという報告もあります。ビタミンDを充足させるためには1日15分程度の日光曝露や食事からの摂取(10~20μg)ですが、日本人の充足度は非常に低いです。そこで当院では天然型ビタミンDのサプリメントの摂取を推奨しています。

ビタミンD以外のビタミンとしては、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンKの摂取が推奨されています。筋肉量維持のためにも体重1kgあたり1gのたんぱく質の摂取も重要とされています。健康に良いからといって特定のものばかりを集中して食べるのではなく、バランスの良い食事を心がけることが大切です。

次回は骨粗鬆症の予防と治療に欠かせない運動療法をテーマにします。

徳島健生病院 整形外科科長 峯田 和明 医師