骨粗鬆症の薬物治療〈各論⑤〉 (13)

骨粗鬆症とは骨強度が低下し、骨折の危険性が増大した状態です。当院では骨折が原因で健康寿命や生命予後を短縮する患者さんを一人でも多く減らすべく、骨粗鬆症診療に力を入れています。今回のコラムでは薬物治療のうちビスホスホネート製剤について簡単に紹介したいと思います。

ビスホスホネート製剤とは

ビスホスホネート製剤(以下BP製剤)は骨吸収抑制薬です。
図1のように骨は破骨細胞により骨吸収し、骨芽細胞により骨形成されます。これを骨代謝と呼びます。骨代謝のバランスが崩れ、骨吸収ばかりが行われる状態が続くと骨が弱くなり骨粗鬆症になってしまいます。このような状態を改善するお薬が骨吸収抑制剤であり、BP製剤は古くから骨吸収抑制剤の代表として使用されてきました。

図1

BP製剤は骨に地雷のように埋まり、破骨細胞が骨を吸収する際に破骨細胞に取り込まれると破骨細胞が壊れます。このようにして骨吸収を強力に抑える効果のある薬剤です。

BP製剤の治療効果

BP製剤の治療効果は「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」で骨密度上昇効果と骨折の抑制効果に優れていると報告されています。BP製剤には経口製剤と静脈注射製剤があり、当院でよく使用されているのは週一回内服製剤のアレンドロン酸(商品名:フォサマック)、月一回内服製剤のミノドロン酸(リカルボン)、月一回静脈注射製剤のイバンドロン酸(ボンビバ)です。患者さんの背景に合わせて幅広い選択ができるのも特徴です。最近では年一回の点滴製剤も開発され、通院困難な患者さんにも使用できるようになりました。

副作用

BP製剤を使用する際に問題となるのが、顎骨壊死です。BP製剤を服用中に歯科治療、特に抜歯を行い顎の骨が溶けるという合併症です。私も患者さんから不安の声をしばしば聞きます。最近の報告ではBP製剤と顎骨壊死の因果関係は相当低いものと報告されておりますので、歯科治療中の方にも安心してくださいと声をかけています。ただ、不安が強い患者さんには休薬をしてもらっています。

骨粗鬆症治療は人生をかけて行う若返り治療です。一番の敵は治療が嫌になって中断してしまうことです。そのような想いをさせないように注意しながら診療を行っています。

徳島健生病院 整形外科科長 峯田 和明 医師