骨粗鬆症の薬物治療〈各論①〉 (9)

骨粗鬆症とは骨強度が低下し、骨折の危険性が増大した状態です。当院では骨折が原因で健康寿命や生命予後を短縮する患者さんを一人でも多く減らすべく、骨粗鬆症診療に力を入れています。今回のコラムでは簡単に薬物治療について紹介したいと思います。

骨粗鬆症治療薬の種類

骨は古い骨を壊し(骨吸収)、新しい骨を作る(骨形成)ことで骨強度を保っています(図1)。これを骨代謝と呼びますが、骨代謝のバランスが崩れることが骨密度低下の主な原因です。

図1

この乱れた骨代謝のバランスを整える薬剤が外来診療で主に使用されています。

骨吸収抑制薬

骨代謝のバランスが乱れる原因として骨吸収の亢進があります。つまり、骨が過剰に壊れてしまう状態です。この状態を是正するのが骨吸収抑制薬で内服薬や注射製剤まで多くの薬剤があります。

骨吸収抑制剤は昔から使用されている薬剤で骨密度上昇や骨折予防効果も高い薬剤が多いですが、骨形成まで抑制してしまうのが弱点です。つまり、骨が壊れることがありませんが、新しい骨が作られない状態になってしまうのです。

骨形成促進薬

骨粗鬆症患者さんの中でも特に骨折の危険性が高い患者さんには骨形成促進薬の適応となります。具体的には骨密度が60%を下回る患者さんや骨折を繰り返している患者さんです。

また、これはあくまでも私見ですが、骨密度が70%台でも活動性が高い方は転倒のリスクも高く骨折の危険性が高いと考えております。このような患者さんに対し、以前は骨吸収抑制薬しか選択肢がありませんでした。しかし、骨形成力を高める骨形成促進薬が使用可能となり、骨折を予防できる可能性が増えました。この救世主のような骨形成促進薬ですが、注射製剤しかなく比較的高価であることが弱点でしょうか。

最後に

具体的な薬剤の種類、効果、副作用については次回のコラム以降で述べようと思います。何度も言いますが、骨粗鬆症治療の目的は骨折を予防することであり、それにはどの薬剤が最も優れているというのはありません。継続が大切です。一つの薬剤で完結ということはないのです。それは骨が加齢とともに弱くなる臓器だからです。 いつまでも自分の足で若々しく充実した人生を送るために骨粗鬆症治療の継続が大切と考え診療しています。

徳島健生病院 整形外科科長 峯田 和明 医師