骨粗鬆症の薬物治療〈各論⑥〉 (14)
骨粗鬆症とは骨強度が低下し、骨折の危険性が増大した状態です。当院では骨折が原因で健康寿命や生命予後を短縮する患者さんを一人でも多く減らすべく、骨粗鬆症診療に力を入れています。今回のコラムでは薬物治療のうち骨吸収抑制剤であるデノスマブについて簡単に紹介したいと思います。
デノスマブとは
デノスマブ(商品名:プラリア)はReceptor Activator of Nuclear factor Kappa B Ligand (RANKL)に対する中和抗体製剤です。骨代謝(図1)は骨吸収と骨形成から成り、骨吸収を担うのは破骨細胞です。破骨細胞が作られて育つにはRANKLへの刺激が必要とされています。よって、RANKLを働かなくすることで、破骨細胞が作られて育たないようにすることができます。RANKLに対する抗体、つまりRANKLにくっついて働かなくするのがデノスマブという薬剤であり、破骨細胞が減ることで骨吸収を抑制します。
デノスマブの治療効果
デノスマブの治療効果は「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」で骨密度上昇効果とあらゆる骨折の抑制効果に優れていると報告されています。デノスマブは半年に1回皮下注射を行う製剤であり、他の薬剤に比べ投与間隔が長い薬剤です。受診機会がなかなか確保できない患者さんにも安全に効率的に使用できる薬剤です。
デノスマブの副作用
デノスマブを使用する際に注意しなければならないのは低カルシウム血症です。デノスマブは破骨細胞の発生、成長をブロックし骨吸収を抑制する薬剤です。骨吸収とは本来、骨を溶かしてカルシウムを必要な臓器に血液を介して届けるという生理的な役割を担っています。よって、骨吸収を強力に抑制する本薬剤は血液中のカルシウム不足になる可能性があります。本薬剤を安全に使用するためには、カルシウムを食事から効率的に吸収できるように活性化ビタミンD製剤や天然型ビタミンDとカルシウムの合剤を服用する必要があります。当院では、初回投与の方は投与1ヵ月、3ヵ月時点での血中カルシウムの推移を診るようにしています。
また、本薬剤は抗体製剤なので投与しなくなれば効果がなくなります。もし、なんらかの原因で投与中断する場合は他の骨吸収抑制剤への切り替えが必要です。
徳島健生病院 整形外科科長 峯田 和明 医師
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