骨粗鬆症の薬物治療〈各論②〉 (10)
骨粗鬆症とは骨強度が低下し、骨折の危険性が増大した状態です。当院では骨折が原因で健康寿命や生命予後を短縮する患者さんを一人でも多く減らすべく、骨粗鬆症診療に力を入れています。今回のコラムでは薬物治療のうちカルシウム薬について簡単に紹介したいと思います。
カルシウム薬
カルシウムは骨の構成成分で骨にとって必要不可欠な栄養素です。カルシウム摂取量が不足すると骨の代謝のバランス(図1)が崩れます。不足したカルシウムを骨から溶かし利用しようと骨吸収が亢進し骨量が減少します。骨の重要な構成成分であるカルシウムを補充するという意味でカルシウム薬は骨粗鬆症の治療薬の1つです。
しかしながら実際の骨粗鬆症診療ではカルシウム薬を単独で用いることは少ないです。なぜならカルシウムは食事からも摂取可能だからです。食事からの摂取量を考えずにカルシウム薬やサプリメントによりカルシウムの摂取量が過剰になるのも問題です。よって実際にはカルシウムが明らかに不足してしまう胃腸管切除後の患者さんや神経性食欲不振症による摂食障害の患者さんや腎機能障害による続発性副甲状腺機能低下症の患者さんが明らかな(※1)低カルシウム血症を起こしているときに用いることが多いです。
カルシウム製剤単独では骨密度をわずかに上昇させるとの報告はありますが、骨折リスクの抑制効果は他の薬剤に比較して弱いとの報告です。カルシウムは骨にとって重要なことは間違いないですが、カルシウムを普段しっかりと摂取しているからといって過信するのは良くないと考えています。きちんと骨密度検査を受けて骨の状態をチェックする必要があると私は考えます。ちなみにカルシウムの摂取量の目安は1日1000mgと言われています。カルシウムが含まれているサプリメントを愛用の方は参考にしていただければと思います。
カルシウム薬の副作用で主なのは胃腸障害と便秘です。
骨粗鬆症診療の中で想うこと
骨粗鬆症診療中の患者さんや、これから骨粗鬆症健診を受けてくださる方に一番伝えたいことは継続が一番大切ということです。骨は加齢により確実に弱くなります。人生100年時代において、健康の基盤は骨です。1つの薬剤で治療が完結するものではないし、薬物治療が副作用などで難しくてもできる治療はあります。皆が骨を大切にすることができれば明るい未来が待っていると私は信じています。
(※1)血液中のカルシウム濃度が非常に低い状態。
徳島健生病院 整形外科科長 峯田 和明 医師
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