(12)暗いところでみえにくい

網膜色素変性症について

だれでも暗い夜道はみえにくく、暗い場所にはいるとしばらくは、目が慣れるまで時間がかかるものです。

が、他の人よりも暗さに慣れる(暗順応)のにかなりの時間を要する目の病気があります。いわゆる「とりめ」といわれるものです。正式には網膜色素変性症といい、その仲間の病気もあります。

これは目の奥の網膜色素上皮という細胞のよわりが原因です。網膜色素上皮細胞は、目の奥に届いた光を感じる視細胞(ものをみる細胞)の働きをサポートする重要な役目をしています。遺伝的にこの細胞が弱いと視細胞も弱ってきます。遺伝傾向がみられますが、いろいろなタイプがあり、関連がわかりにくい場合もあります。

網膜色素変性症は、5000人に1人くらいの頻度といわれ、緑内障、糖尿病網膜症とともに、失明原因の上位に位置する難病です。病気の進行はさまざまなので、若いときから症状がでる人もいれば、年をとってから進行する人もいます。ご家族は下記のような症状がなくても、定期的に検査しておいた方がよいでしょう。

〈症状〉

一般的には、暗いところがみえにくい(夜盲)症状からはじまり、だんだんとみえる範囲がせまくなる(視野狭窄)がすすみ、最終的には中心部もみえにくくなる(視力低下)状態になります。みえる範囲はまわりからだんだん狭くなります(求心性)が、輪状にみえにくい部分ができる(輪状暗点)時期もあります。

〈治療〉

これまでは、有効な治療方法がありませんでした。対症療法として、治療用サングラスの使用、ビタミンAなどの内服、血のめぐりを良くするお薬の内服などしかありませんでした。しかし、最近では遺伝子治療や再生治療、人口網膜などの研究がすすんできました。iPS細胞を利用した再生医療の研究も盛んです。iPS細胞から作成した網膜色素上皮細胞を移植し、改善がみられたとの報告がありました。いづれも実用にはまだ時間がかかると思われますが、期待できます。

また、以前に紹介したロービジョンケアでは、生活の質の向上のため、便利グッズやパソコンやスマホアプリなどを活用できるよう支援しています。

徳島大学病院 眼科には専門外来があります。JRPSという日本網膜色素変性症協会という患者会もあります。

健生病院 眼科 西内 貴子医師