(10)ゆがんでみえる

網膜前膜について

網膜前膜とは?

目の奥の中心部は黄斑といい、ものをみるために最も感度のよい大切な部分です。(図1) この部分の表面にできる、セロファンのような薄い膜を「網膜前膜(網膜上膜、黄斑前膜ともいう)」といいます。

図1 正常黄斑

初期には、視力にも影響せず、自覚症状もないため、気づきにくいのですが、他の病気のことで受診したときにも、OCT(光干渉断層計)検査でみつけることができるようになりました。一定進行すれば、眼科医がおこなう眼底検査や健診眼底カメラでも発見することができます。

膜はゆっくりと厚みを増していき、収縮するとその下の網膜に波打つようなしわが出来たり、けん引がかかって黄斑部が隆起したりします。(図2A・B)

図2A 網膜前膜
図2B 網膜前膜

こうなると視力低下やゆがんでみえる症状がおこってきます。おなじような歪みの症状がでる加齢黄斑変性症とは悪い部分がことなります。(図3)

図3

原因

多くは加齢による変化です。硝子体(眼球内の透明なゼリーのようなもの)とそれを包んでいる硝子体膜が、それまで接していた網膜から離れ、眼球内の中空に浮く加齢変化がおきると、多くは飛蚊症として感じるだけです。が、硝子体膜の破片や細胞が網膜上にのこってしまうことがあり、これが前膜になります。

若い人でも、外傷やブドウ膜炎などの病気、網膜裂孔や網膜剥離の手術後にできることもあります。

対応

定期的に、視力検査やOCT検査をして、進行の有無を確認します。悪化がなければ様子をみるだけでよいです。はっきりした症状がでて、視力低下が進んだ場合は硝子体手術が必要となります。この膜を網膜からはがす手術です。リスクはあるので、不便さも考慮して相談しましょう。白内障とも一緒におこることがありますが、白内障手術のみでは、残った前膜により視力改善が途中までになると予測される場合には、同時手術を選択します。

健生病院 眼科 西内 貴子医師