(3)ロービジョンとは?
目の病気の中には、最善の治療をしても、視力障害がのこり、さらに進行していくものもあります。見え方がぼんやりするのみでなく、みえる範囲(視野)の障害も、見たい中心がみえにくくなる場合と周辺から狭くなる場合があり、どちらも不便です。これらをあわせて視機能の低下(ロービジョン)といいます。
進行した糖尿病網膜症、緑内障、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症、視神経萎縮、血管閉塞、怪我などの場合です。
残った力を最大限使おう
障害を受け入れることがむずかしく、なにかよい治療法はないかと次々と医療機関を訪れる方もおられます。たしかにお気持ちもわかります。医療の進歩の情報収集や即応のために、医療機関との繋がりを継続しておくことは大切です。が、失われた部分のみにとらわれず、残った力を評価して、それを最大限使用していく方法を学び、すこしでも生活が便利になるように準備していく時間という視点をもつのはどうでしょうか。
支援の和
徳島では、医療、教育、福祉の各分野のものが集い、連携を取り、ロービジョンの方を支援する「徳島ロービジョンネットワーク」があります。医療分野からは大学病院を中心として一般病院や開業の眼科医や視能訓練士の有志が参加しています。教育分野からは徳島視覚支援学校の教師が、福祉分野からは視聴覚障がい者支援センターの職員の方々が参加しています。情報交換や勉強会では、多くの新しい情報を得て、ロービジョンの方の対応に役立てることができています。たとえば、拡大鏡や遮光眼鏡などの各種補装具や最新の器具が開発されつつあることを共有しました。また、みえにくさの体験を通して工夫できることがあり、小児のみでなく、あんま、はり、きゅう師などの職業科のこと、福祉として利用できる制度やサービス、白杖を使っての安全な歩行訓練や同行援護従業者の資格取得講座のことなど新しい情報を得ました。
そして、「一人で悩まず、ここに連絡すれば、相談できます」という、スマートサイトという冊子を各眼科医療機関においてあります。
便利グッズや工夫
以前からある、音でしらせるタイプの時計やコップ、体温計、パソコンの他、拡大読書器もIT機器の進歩で小型化し、携帯できるようになってきています。スマートフォンを使って、便利アプリから、字を拡大したり、カメラにうつったお札の種類や文章を読みあげてくれたりすることもできます。暗いところでも明るくみることのできるカメラのついた眼鏡もあります。カレンダーや文書は背景が黒で白字になったものがみやすく、販売されていますし、画面でも簡単にボタンひとつで白黒反転できたりします。調理器具も食材がよくわかるように、黒いまな板、黒い包丁も便利です。ハガキや便箋などで字を書く場合、黒の厚紙の枠のタイポスコープを使うのも便利です。
スポーツの楽しみ
昨年のパラリンピックで、みえにくくてもいろいろなスポーツができることがひろまりました。陸上競技ほかゴールボール、ブラインドテニス、水泳、柔道などなど。県内にも日常的にみえにくい方とともに伴走や伴ウオーキング、ボルダリングの活動をしている団体もあります。残った視機能、他の五感、運動能力も最大限利用していきましょう。
健生病院 眼科 西内 貴子医師