(2)白内障といわれたら…

白内障(目の中の水晶体の濁り)は加齢にともない、必発と言われています。ただ、その程度はさまざまです。かすみやみえにくさ、めやになどで眼科受診した場合でも「白内障がありますね」と言われると、えー!もうそんな年?と少々ショックな表情をされる方もいます。そして、家族や友人の手術の話を思い出し、どうしたらよいのだろうと迷い、費用は?痛い?などと先々を心配してしまうようです。

私は今の状態を正しくお伝えしたいので、白内障があれば話します。しかし、そこから先の話が大事です。実際は「手術の時期ですね」と言われるまでは経過観察でよいのです。白内障手術は早すぎても、遅すぎても安全にできるかどうかに関連してきます。

では、手術の時期はどのようなことを参考に決めるのでしょうか?

白内障は全身にも影響

まず、みえにくいことでおこることをあげてみましょう。テレビ、新聞がみえにくい、向こうからくる人の顔がかなり近づくまでわからない、運転免許更新ができないなど視力自体に関係することの他に、白内障はさまざまな病気や健康問題に関連していることがあきらかになってきました。歩行速度がおそくなり、筋力が衰え、転倒がふえ、その他の運動機能も低下します。研究では視力が悪化するごとに認知症のリスクが増えることもわかってきました。

また、目は生体リズムの調整上、重要な役割を持っていますので、紫外線の刺激が目の奥へ届かないようになると、生体リズムをつかさどる脳内ホルモンに影響して、睡眠障害、うつ、血圧変動も起こります。睡眠の質の向上のためにも昼間しっかり見えていることは大事です。

手術時期の参考にすること

  1. 白内障の濁りの程度:濁りのタイプや場所を診察で確認します。
  2. 視力:普通車の運転免許に必要な視力は0.7、読書やテレビの字幕が読める視力は0.5、食事や歩行、入浴ができるのは0.1くらいです。生活上の必要視力によって、これ以下になりそうな時、相談です。
  3. 他眼の状態:他眼の病気の有無も考慮し、今後の見通しも予測します。左右バランスも大事です。
  4. 糖尿病や高血圧、腎臓病など全身状態:きちんとコントロールできていることが安全な手術につながります。
  5. タイプによる手術の難しさ:手術は合併症なく100%安全にできる、とは限りません。難しい目もあります。きれいに瞳が開かない目、奥目、小さい目は手術器具がはいりにくい。難聴の人は、局所麻酔下の手術で医師の指示をわかってもらいにくい。前立腺薬を飲んでいる人では、手術中に虹彩(茶色目)が予想外の動きをすることがある。認知症の人は手術中急に動き、無事に終了できないことがある。術後もこすったりして感染をおこす危険があり、手術しない方がよい場合もあるのです。

遠慮なく相談

白内障手術は以前よりも安全にでき、よい結果を生む方向に進歩してきました。が、一定の視力低下があっても、生活に支障がなければ、「もうすこし様子をみたい」とはっきり伝えましょう。迷っていることがあれば、話してください。そこから「では、進行について○ヶ月ごとにみていきましょう」などと相談になります。手術をいつするのかは人それぞれで、最終的にはご本人が決める(希望する)ことなのです。

健生病院 眼科 西内 貴子医師