もの忘れ(軽度認知症)検診について
高齢化社会を迎え、最近、もの忘れをするようになった、先ほど物を置いた場所が思い出せなくなった。ご家族から少し変だと言われた等で、当院を受診される方もいられます。認知症を心配されているのでしたら、受けていただきたいのが当院の「もの忘れ検診」です。
認知症について
認知症の原因は、大きく三つにわかれます。
①治療可能な認知症
甲状腺機能低下症、副腎皮質ホルモン低下症、ビタミンB12不足、ビタミンB6不足、ビタミンB1不足症、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、薬剤により引き起こされる認知症です。
②完治はしないが悪化はしないように経過観察や治療を行う。
Ⅰ.完治はしない認知症として、アルツハイマー病が67.7%、脳血管性認知症19.5%、レビー小体型認知症4.3%などがあります。有名なアルツハイマー病は、アミロイドβという蛋白が神経細胞に沈着し、神経細胞が死滅して引き起こされる病気です。現在、このアミロイドβを除去する治療薬が開発されました。
Ⅱ.脳血管性の認知症は脳梗塞、脳出血により、脳内の神経細胞破壊され、死滅することから起こってきます。発症早期の適切なリハビリテーションである程度回復してきます。
③軽度認知症(MCI)について
最近、MCI(軽度認知症)が取り上げられる様になってきました。MCIとされるのは以下の様な方です。
- 患者自身あるいはご家族が認知機能低下を疑っている
- 認知機能は正常とは言えないが、認知症診断基準を満たさない
- 基本的には日常生活は可能 (一人暮らしもできる)
一般に認知症は正常な状態から一気に認知症のなるのではなくMCI(軽度認知症)の状態を経て悪化していきます。
65歳以上の13%にMCIが認めらます。MCIは放置しておくとアルツハイマー型認知症になる可能性が15%と言われていますが、すべての人がアルツハイマー病になるわけでありません。MCIにとどまることもありますし、20%前後の人は正常にもどるとされています。正常にもどるためには認知症に至るリスク因子を取り除くことが必要です。
当院の「もの忘れ検診」でも積極的に「MCIの診断・指導」に取り組んでいきます。
もの忘れがひどい等で認知機能検査をうけたい方に、単にMRI画像だけでは不十分です。認知機能低下はどの程度なのか、治療可能な認知症かどうか、悪化させる要因は何であるのか、など包括的に診ていく必要があります。
特にMCIと診断されたら、認知症になるリスク因子を取り除く努力をする必要があります。またその経過を見るため、定期的に(4か月毎)検査を行うことを勧めます。MCIでアルツハイマー病疑いとなれば、更に2次検査を行うことになります。
アルツハイマー病が疑われるMCIの場合、診断確定のため、SPECT,アミロイドPET, アミロイドβ測定などの精密検査(2次検査)を、勧めていきます。徳島大学病院、県立中央病院、徳島市民病院などに紹介させていただきます。もの忘れ検診から1〜2週間後に脳外科医から結果説明をいたしますが、この際にはご本人だけでなくご家族も一緒にきていただくのが望ましいです。
MC1の精査結果がアルツハイマー型認知症であれば、MCIからアルツハイマー病に移行するのを阻止するために、最近では新たな治療薬が出ています。アミロイドβ量を減少させる、レカネマブ、ドナネマブの点滴投与です。保険でも認められるようになってきていますが、やや高価なのが欠点です。あくまでアルツハイマー病の進行を抑制するためであって、レカネマブ投与したからと言って、アルツハイマー病が治癒するものでもありません。
またレカニマブ投与には、厳しい投与基準があり、この治療を希望する患者さんには更に詳しく説明します。
物忘れ・認知症が気にかかる方は、当院の「もの忘れ検診」をぜひ受けてみて下さい。

徳島健生病院 脳神経外科医師 藤本 尚己