栄養障害について
Ⅰ.在宅医療の盲点
- 在宅医療患者は多疾患の併存、摂食嚥下障害、認知症やうつ病、術後の状態、寝たきりなどから「栄養障害」を起こすリスクを持っています。
- 栄養障害は低栄養だけでなく、過剰なエネルギー摂取、サプリメントなどによる特定の栄養素の過剰摂取といった「栄養過多」も含まれます。
- 低栄養状態はさまざまな健康障害や疾患の回復の遷延を起こし、入院になったりADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)の低下につながります。
Ⅱ.低栄養の評価
- 体重減少、やせ症、筋肉量や筋力の低下、活動量の低下、易感染症、創傷治癒遅延、浮腫、皮膚炎、舌炎などを評価します。
- 簡便な方法として、定期的な体重測定、BMI評価と体重の増減を確認します。
- 握力や歩行能力でフレイル評価ができます。
- 血液検査ではアルブミン、血清総コレステロール値、リンパ球数の低下を調べます。
- 必要があればトランスフェリン、亜鉛、CRPも追加します。
- 消化器症状や食欲不振を起こす薬剤の確認も欠かせません。
Ⅲ.治療法
- 十分な栄養アセスメントを事前に行います。経口摂取を基本にしますが、経管栄養や経静脈栄養も検討します。
- 経腸栄養剤
A エンシュア・H 250mL(375kcal)
1日1~数回に分けて摂取
B B. イノラス配合経腸用液 187.5mL(300kcal)
Aと同じ用法(微量元素の量が多い)
Ⅳ.まとめ
- 在宅医療患者は基本的に「栄養障害」のリスク者として接します。
- 低栄養の評価は症状と血液検査を組み合わせます。
- 経腸栄養剤として2剤を使い分けます。
- 現在、両親の介護をされている方の参考になれば幸いです。
(参考)望月弘彦『私の処方 食欲不振・栄養障害・悪液質』日本医事新報(No.5199)、日本医事新報社、2023年
徳島健生病院 内科・総合診療科 医師 古川 民夫