座る時間を減らそう

Ⅰ.座位行動

 座位行動は「座位および臥位における1.5メッツ以下のすべての覚醒行動」と定義されます。従って「立位」と「座位や臥位で眠っている場合」が座位行動でないことは、定義に照らして言えます。

 A座位行動に似た表現としてB身体活動不足があります。
 B身体活動不足は中高強度身体活動時間(3メッツ以上、後述)が不足している状態なので、AとBを区別すべきです。AとBの不一致例を挙げます。

 通勤に週150分以上の中強度以上の身体活動をしていると、「活動的」とされます。しかし同じ人が 労働時間のほとんどを座って過ごしている場合は「Aが多い」と考えられます。

Ⅱ.メッツ(METs)

 メッツ(METs)は運動強度の単位であり、「1メッツ=安静座位状態」です(この定義を覚えましょう)。
次に身体活動とMETsの関係を示します。

  • 歩行=3METs、歩行よりも強度の低い生活活動=2METs、ゆっくりとした掃き掃除=2.3METs
  • 立位での皿洗い=1.8METs、座って編み物をしている=1.3METs

 次の定義が役立ちます。

座位行動1.5METs以下
低強度身体活動1.5~3METs
中等度身体活動3~6METs
高強度身体活動6METs以上
中高強度身体活動3METs以上(前項Ⅰで用いた)

Ⅲ.座位の健康影響

 カナダは「1日の座位時間を8時間以内にすること」を推奨しています(2020年)。

 1日の座位時間が長いと死亡率が高まり、短いと低くなります。

 1回あたりの座位時間あるいは座位の中断回数が健康に影響します。従って、30~60分に1回は座位時間を中断することが、望ましいと考えられます。私も時々診察中に座位から立ち上がるよ うにしていますが、理に叶っているようです。

 スタンディングデスクを用いて「立位」でパソコン操作を行うことは労働衛生上、勧められます。

Ⅳ.まとめ

  • 座位行動とMETsの定義を示しました。
  • 長時間座ったままの作業は健康障害や死亡率の上昇につながります。
  • 意識的に座る時間を中断する機会を増やしたり、オフィス業務にスタンディングデスクを導入した りするなどの工夫が望まれます。

(参考)『疫学の事典』(日本疫学会・監修)朝倉書店、2023年

徳島健生病院 内科医師 古川民夫