IgA腎症について
Ⅰ. 健診で検尿異常
- 健康診断で長期間無症状ですが、血尿や蛋白尿を偶然指摘されることがあります。チャンス血尿、チャンスタンパク尿と表現されます。
- 感冒時(急性上気道炎、または急性消化管感染症)に肉眼的血尿が生じるのが特徴的所見です。IgA腎症の血尿はコーラ様の尿としてみられることが多く、数時間から数日程度持続します。
- 尿定性検査を3回以上行い、そのうち2回は尿沈渣で顕微鏡的血尿(強倍率で毎視野に赤血球5~6個以上)が見られ、間歇的または持続的蛋白尿を伴う場合、「IgA腎症」を念頭におきます。
Ⅱ. IgA腎症
- 我が国でIgA腎症は糸球体腎炎のうちもっとも頻度が高く、腎生検例の30~35%を占めます。
- ネフローゼ症候群の発現は比較的まれです。
- 血清IgA値315mg/dL以上が半数以上にみられる頻発症状です。
- 「IgA腎症」の診断は腎生検を行い、蛍光抗体法で「メサンギウム領域にIgA沈着」を認めます。
- 一般に経過は緩慢ですが、20年の経過で約40%が末期腎不全に進行します。
Ⅲ. 治療
- 定期的な経過観察を行い、重症度に応じた治療を行います。重症度はeGFRと蛋白尿の程度で決めます。
- 保存療法として生活管理(血圧管理、減塩、脂質管理、血糖管理、体重管理、禁煙など)を行います。
- 腎保護療法として、必要に応じてRA系降圧薬、経口ステロイド薬、ステロイドパルス療法、免疫抑制薬、抗血小板薬、n-3系脂肪酸(魚油)など、多くの治療選択があります。
- 近年、進行性のIgA腎症の治療として「扁桃摘出+ステロイドパルス療法」が行われつつありますが、さらなるエビデンスの集積が望まれます。
Ⅳ. まとめ
- 健診で血尿・蛋白尿がみられた場合は早めに専門医を受診し、必要に応じて「腎生検」を行い診断します。
- IgA腎症の腎予後は組織像および臨床の重症度から推定し、透析導入リスクを層別化します。
- 予後不良な病変が認められる場合、ステロイドパルス療法(+扁桃摘出)が選択肢になります。
- IgA腎症は長期間の治療を要するため、患者さんの治療意欲が減退しないように、医療側の熱意と工夫が求められます。
(参考) 『病気がみえる(第8巻)腎・泌尿器』メディックメディア、2019年
『難病事典』尾崎承一編、Gakken、2015年

徳島健生病院 内科・総合診療科 医師 古川 民夫