徳島健生病院 呼吸器内科医師 中野万有里

睡眠時無呼吸症候群(以下SAS)は、睡眠障害のなかでも最も頻度が高い病態のひとつです。 1998年に持続陽圧呼吸療法(以下CPAP)が保険適応となり、使用患者数は50万人を越えようとしています。CPAP使用の50%以上は60歳未満の青壮年層が中心です。

SASは睡眠時に無呼吸や低呼吸が発生する病態です。 無呼吸や低呼吸が10秒以上続く状態(無呼吸低呼吸指数:AHI)を1時間に5回以上認め、日中の眠気、寝ていても何回も目が覚める、倦怠感などの症状がある場合にSASと診断します。
閉塞性睡眠時無呼吸(以下OSA)と中枢性睡眠時無呼吸(以下CSA)があり、最もよくみられる病態はOSAです。
肥満、加齢、男性が最も重要な発生関連要因と考えられており、国内での潜在患者は約500万人ともいわれています。

SAS患者では、夜間にたびたび呼吸が止まってしまうために低酸素血症、交感神経の緊張(血管収縮)、酸化ストレスや炎症、代謝異常(レプチン抵抗性、インスリン抵抗性など)により生活習慣病の準備状態がすすみ、5-10年後に高血圧、心不全、虚血性心疾患、脳血管障害を発症しやすくなります。
事故を起こすリスクも上昇するため、診療・治療・管理は社会的にも重要な課題です。

CPAPは中等症(PSGでAHI 20以上)以上のOSAの標準治療です。在宅持続陽圧呼吸療法といい、マスクを装着し陽圧をかけることで気道を確保し閉塞を防ぎます。自宅で毎日装着します。旅行などの際は、旅行先へも持っていける大きさです。 使用効果(臨床症状の改善、脳心血管障害の合併症の予防効果など)の発現には、1日平均4時間以上の使用がすすめられています。

パートナーからのいびきの指摘や日中の眠気が強い場合は、一度検査をすることをおすすめします。
SASの検査を希望される方はまずは一般外来を受診してください。
受診時、SAS検査希望とお伝えください。
受診時に、眠気チェックの問診を先に行います。
簡易検査といい、携帯型ポリグラフ装置を用いたスクリーニング検査を初回は行います。
簡易検査は、装置がコンパクトなので、自宅で検査することが可能です。
簡易検査でAHI 40以上の方がCPAPの保険適応になります。

簡易検査で境界領域の方には入院でのフルポリグラフィ(PSG)をすすめています。 PSGでAHI 20以上の方もCPAPの保険適応になります。

軽症の方やCPAPが使用できない場合は、口腔内装置や2021年6月1日から保険適応となった舌下神経電気刺激装置植え込み術などをすすめます。
どちらも当院では行っていないため、歯科や他県の医療機関に相談をしています。
アデノイド肥大や扁桃肥大などの場合は、耳鼻咽喉科に相談、紹介をしています。

睡眠障害は脳機能を低下させ、認知症の発生のリスクになることもある生活習慣病のひとつです。

まずは規則正しい生活と運動習慣、禁煙、節酒、十分な睡眠の確保の継続が重要です。
十分な睡眠が確保できない場合、一度受診を検討してください。