徳島健生病院 外科医師 佐々木清美
排便のことで悩んだことがまったくないという方はむしろ少数派なのではないでしょうか?
こと排泄ということについてだと、男はくだる、女は詰まるということわざめいた言葉がありますが、どちらかと言えば比較的若い男性は下痢に悩み、一方で女性は老いも若きも便秘に悩むことが本当に多いと、肛門疾患を診ることが多い外科医の立場から実感しています。
下痢が続くと肛門がひりひり痛くなり、一方で便が硬くなると出す時に長時間かかる、その都度すごく力む、そして苦労して出した後に痛みがでたり出血したりと悩みは尽きません。その一方で、ほどよい硬さの便が多めにスムーズにでたあとの気持ちの良いこと。一度きりの大切な人生の中で排便に費やす時間は合計するとそれなりのものになると思いますし、それが辛くないひとときになるようにどうすればよいか、現時点で思っていることをお伝えしたいと思います。
その1
肛門はまぶたと同じくらいダメージを受けやすい繊細な部分であることを自覚してください。顔の皺やたるみむくみなどはすごく気にしてケアに励む女性の皆さん、その注意力を肛門にも向けてください。排便の後ごしごしこすっていませんか?温水洗浄便器でたっぷり時間をかけて肛門を洗いすぎたりしていませんか?洗うなら短時間、理想は10秒以内、そしてふきとりは優しく。洗顔みたいに気配りをお願いします。
その2
せっかくおこった便意を我慢していませんか?朝ごはんをしっかり食べると大腸がしっかり動いて便意がでてくることが多いのですが、忙しくて時間がないなどの理由でこの便意を生かさないとどこかに消えてしまい、その結果大腸内に必要以上に便が長くとどまることになります。
留まっていると便の中の水分が吸収されて便はどんどんかたくなり、出すのも一苦労、そして出る時には繊細で傷つきやすい肛門をナイフのように切り裂いたり、きばり続けて血液の流れがとどこおり肛門近くの血管がこぶのように膨れ上がって戻らなくなったりしていきます。
便意がおこったらすぐにトイレに。そして出そうにない時ははやめに切り上げる。ここが大切です。我慢する習慣がつくと、直腸の中に便がたっぷりたまっているのに脳に刺激がいかずに便意がおこらないという怖い状態になります。
その3
食事にも気をつけましょう。便秘で悩む方にはオリーブオイルが強い味方になります。1日15mlから30ml、便秘に悩むあなた、どうでしょう?発酵食品、お米、ヨーグルトなどもおすすめです。
その4
肛門は血流が良くなると調子がよくなる部位です。下半身を冷やす、立ったまま、座ったままが長時間続くなどで肛門の血流が悪くなるとどんどん調子が悪くなります。冷やさない、同じ姿勢を続けない、お尻の調子が悪い時は湯船でしっかり温まるなども大切なことです。
このようなことを心がけても良くならない、肛門のことでつらいあなた。お力になれるかもしれません。痔と思って我慢していたけど実は大腸がんがかくれいたりすることもあります。大腸の検査体制も充実していますのでご相談ください。
なお、初回診察になる方については待ち時間が長くなることがあります。その際はどうかご容赦ください。